企業が成長を目指す上で、新規事業の選定は重要なステップです。企業のビジョンに整合性のある事業候補がいくつか上がった場合、それらをどのように評価し、選択すべきかを整理するためには戦略的なアプローチが必要です。今回は、事業選定に役立つ戦略フレームワークを2つ紹介します。

1. アンゾフの製品・市場マトリックス

アンゾフ(H. I. Ansoff)は、企業が事業を拡大する際に用いるべきフレームワークとして、「製品」と「市場」の2軸で事業戦略を分類しました。この「製品・市場マトリックス」は、企業の成長戦略を4つの方向性で考える手法です。

  • 市場浸透戦略
    既存の製品を、既存の市場や顧客に対してさらに多く販売する戦略です。例えば、運転代行サービスを大阪市内でさらに普及させることが考えられます。
  • 新市場開拓戦略
    既存の製品を新しい市場(例えば、近畿圏や外国人観光客をターゲットにする)に提供する戦略です。運転代行サービスであれば、観光地をターゲットにしたサービス展開が一つの例です。
  • 新製品開発戦略
    既存の市場で、新しい製品やサービスを提供する戦略です。例えば、プレミアムサービスや高級車に特化した運転代行サービスなどを新たに提供することが考えられます。
  • 多角化戦略
    新しい製品を、新しい市場に提供する戦略です。これは非常にリスクの高い戦略ですが、成功すれば大きな利益を見込むことができます。運転代行業における多角化としては、例えば、長距離運転代行や、高級車のリースサービスといった新たな事業を立ち上げることが考えられます。

2. BCGマトリックスとGEマトリックス

次に、企業が保有する複数の事業を評価するためのフレームワークとして、BCG(Boston Consulting Group)マトリックスを紹介します。このフレームワークでは、事業の成長性と市場シェアを2軸で分類し、企業の資源配分を効率的に考察します。

  • スター(市場成長性が高く、相対市場シェアも高い)
    成長性が高く、今後さらに注力するべき事業です。例えば、高級車向けのプレミアム運転代行サービスがこのカテゴリに入るかもしれません。
  • キャッシュカウ(市場成長性が低く、相対市場シェアが高い)
    安定した収益を上げる事業です。大阪や北新地の運転代行サービスが安定的に利益を上げる事業になるでしょう。
  • クエスチョンマーク(市場成長性は高いが、相対市場シェアは低い)
    成長性はあるが、まだ競争力に欠ける事業です。例えば、遠距離運転代行サービスが市場成長性は高いものの、競争力が弱い場合、投資や改善が必要です。
  • ドッグ(市場成長性も低く、相対市場シェアも低い)
    事業から撤退を検討する段階です。市場のニーズに合わないサービスや、競争力のない事業はここに分類されます。

また、GE(General Electric)マトリックスでは、市場成長性を「業界の魅力度」、市場シェアを「自社の強み」として分類し、企業の戦略をより柔軟に考察する方法です。

事業選定の優先順位

新規事業を選択する際は、上記のフレームワークを活用して、どの事業が企業にとって最も成長性が高く、かつ自社の強みを活かせるかを見極めることが重要です。市場の魅力度や自社の資源、競争環境を十分に考慮し、最適な事業を選択することが、企業の成功に繋がります。